うちの子が突然たてなくなってしまった!!足を痛がって全く地面につかないの。
そんな時は整形外科を受診しましょう。今日は、ワンちゃんに多い整形外科疾患のトップ3を簡単に紹介したいと思います。
詳細はそれぞれの疾患のページをリンクしておきますから、是非参考にしてくださいね。
こんにちは、獣医師のジマです。ワンちゃんが突然足を地面に着けなくなってしまう、原因で最も多い疾患3つを紹介したいと思います。
整形外科の手術では実に50%以上が、この3疾患で占められています。
膝蓋骨内方脱臼
膝蓋骨内方脱臼は特に小型犬で多くみられる疾患です。正常な膝蓋骨は、大腿骨にある、滑車溝とかみ合うような形で、大腿骨の正面に位置しています。
しかし、遺伝的に滑車溝の溝が浅かったり、膝蓋靭帯の付着部である脛骨粗面が内側に変位している子は、膝蓋骨が大腿骨の内側に変位してしまいます。
膝蓋骨内方脱臼はその程度により4段階にグレード分けされています。
グレード1
普段は膝蓋骨は正常な位置にあるが、人の手によって内側に脱臼さることが出来る。 手を離すと脱臼は自然に整復される。
グレード2
屈曲時に、まれに脱臼することがあるが、人の手により容易に整復することが出来る。
グレード3
屈曲時、伸展時のいずれの状況でも脱臼する。人の手で整復してもすぐに再脱臼を起こす。
グレード4
常に脱臼している。人の手で脱臼を整復することが出来ない。
膝蓋骨内方脱臼を完治させるには、手術を行うしかありません。手術の適用になるのは以下の条件に当てはまる子です。
①若齢のグレード2以上②臨床症状を伴うグレード3以上③オーナーが希望する全てのグレード
手術はいろいろな手法を組み合わせて行います。浅い滑車溝を削って深い滑車溝を作ってあげたり(滑車溝形成術)、膝蓋靭帯の付着部を外側に移動したり(脛骨粗面転移術)、膝蓋骨を内側に引っ張る筋肉や膜を切ったり、外側に引っ張る筋肉を重ねて引っ張る力を強くしたりする手術をその子の状態に合わせて組み合わせます。
手術の費用は30-50万円前後かかることが多いです。
前十字靭帯断裂
人の場合、前十字靭帯の断裂はサッカー選手などのスポーツ選手に多い病気です。一般の生活で、前十字靭帯が切れてしまうことはほとんどないでしょう。
しかし、犬の前十字靭帯の断裂はとても多いです。外傷による断裂や、老化に伴い前十字靭帯がほつれるように切れていったりします。前者の場合は急に症状が出ますが、後者の場合は慢性的に症状が出ます。
人の前十字靭帯の断裂では、切れた靭帯を縫い合わせる手術を行いますが、ワンちゃんの場合は、切れた靭帯を取り除き、骨切り手術を行って、靭帯が支えていた力を弱くすることで、靭帯が無くても歩行に問題が出ないようにします。いろいろな手術が考案されてきましたが、現在最もメジャーになっている手術は、脛骨高平部水平化骨切り術という手術です。この手術は、従来の手術と比較して、膝関節内の半月板を損傷しにくいというメリットがあります。また、この手術には専用のプレートを用いますが、そのサイズが幅広くラインナップされているため、小型犬からトラなどの超大型動物まで対応することが出来ます。
こちらの手術も費用としては30-50万円前後かかることが多いです。
橈骨・尺骨骨折
橈骨、尺骨とは肘から手首の場所にある骨です。太い橈骨と、細い尺骨の二本が並行に並んでいます。
この骨の骨折はトイ種をはじめとした小型犬に圧倒的に多いです。骨折の原因は、落下です。ソファーから飛び降りたり、飼い主が抱っこしているときに誤って落下させてしまったり、カートから飛び降りたりした時の、着地の衝撃で折れてしまいます。
トイ種の橈骨・尺骨はとても脆いため、1メートル程度の落下で折れてしまうため、注意が必要になります。
治療法は、ギプス固定、創外固定、プレート固定が一般的です。
ギプス固定は、添え木をしてその周りを固定します。メリットは費用面が他の2つの選択肢に比べてかからないことです。3万円程度で済むことが多いです。一方でデメリットは、骨折面を完璧に整復することは難しく、多少のずれが生じたり、深刻な場合は、後遺症が残る可能性があります。
創外固定は、皮膚越しに数本のピンを骨に刺してそのピンを固定することで骨折部の安定性を保ちます。メリットは、皮膚切開をしない為、低浸潤で治療を行うことが出来ます。一方でデメリットは、骨が完全にくっつくまでの2か月間はピンが外せない為その間はエリザベスカラーをしなければいけません。また、ピンを抜いた穴から感染し、骨の一部が溶けてしまう場合があります。
プレート固定は、手術を行って、骨折した骨に直接プレートをあてて、スクリューで固定します。この方法ではかなり正確なポジションに骨を戻すことが可能です。また、皮膚がくっつき抜糸が終わればシャンプーをしたり、エリザベスカラーを外すことが出来ます。一方でデメリットは、かなり低確率ではありますが、プレートを当てた骨が腫瘍化することがあります。
発症するリスクを減らすために家庭でできること
膝蓋骨内方脱臼や前十字靭帯の断裂の原因の1つは肥満です。体重が増加することで、足にかかる負担は増加します。適切な体重に管理してあげることで、発生リスクを減らすことが出来ます。
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