犬の麻酔、猫の麻酔は安全?危険?

手術

こんにちは、獣医師のジマです。今回は、麻酔についてのお話をしたいと思います。麻酔は、手術の痛みを取る時に使用されるのはもちろん、動物の場合は、CT検査やMRI検査など動いてはいけない検査をする際や、歯をきれいにするスケーリング治療や、腫瘍の細胞を取るためのFNA検査など実は、多くの治療で使用されています。そんな麻酔の基本的な考え方や、危険性、安全性を高めるための努力について少しお話したいと思います。

麻酔の種類

麻酔は、大きく全身麻酔と局所麻酔に分けられます。全身麻酔はさらに注射薬によるもの、気体による吸入麻酔に分けられます。局所麻酔は、多くの場合モルヒネのような麻薬と呼ばれる薬品を使用して局所の痛みを取ります。これらの麻酔を単独で用いたり、組み合わせたバランス麻酔を行って、手術中や術後の痛みを緩和します。

バランス麻酔ってなに?

麻酔の目的は大きく4つにわけることができます。

1つ目は痛みの緩和。

2つ目は、意識の消失。

3つ目は、有害な反射の消失。

4つ目は、筋肉の収縮を抑えることです。

4つの目的を全て達成しないと十分な麻酔とは言えません。しかし、それぞれの薬剤には得意なポイントと苦手なポイントがあります。ですから、1つの麻酔薬のみで4つの目的を達成しようとすると投与量が多くなってしまいます。薬の投与量が増加すると、副作用の危険性もそれだけ増加することを意味します。

バランス麻酔の考え方は、4つの目的をそれぞれ得意な薬でカバーすることで全体の投与量を減らし、副作用の危険性を最小限に抑えるという考え方です。

バランス麻酔の1例をあげるとこのようになります。意識消失と有害な反射を抑制するために注射麻酔薬のプロポフォール、鎮痛と有害な反射の抑制のために麻薬であるフェンタニル、長時間の意識消失、筋肉の収縮抑制のために吸入麻酔薬のイソフルランを組み合わせます。

このように組み合わせることでイソフルランの副作用である低血圧や体温低下を抑えることができます。

麻酔の危険性は??

麻酔に限らずですが薬には主反応と副反応が必ず存在します。主反応とは病態の抑制を期待する薬効をいい、副反応は、それ以外の作用を指します。副反応は副作用という言葉で一般的に用いられます。例えば、皆さんが頭痛や発熱の時に飲む、バファリンやイブなどのNSAIDsと呼ばれる薬の主反応は、抗炎症作用から起こる解熱作用や鎮痛作用になります。一方で副反応として、下痢や嘔吐などの消化器症状があります。

麻酔薬にも当然副反応が存在します。心拍数の低下や血圧の低下、呼吸抑制などが一般的な副反応としてあげられます。これらの副反応は、麻酔量の調節や、相反する薬剤効果を持つ薬の投与で、抑えることができます。しかし、1部の症例に対しては激しいアレルギー様症状を示す場合があります。

また、麻酔の危険性は動物の年齢や病歴、種類などのパーソナルデータにより大きく左右されます。老齢な子や、ホルモン疾患、呼吸器疾患、脳神経疾患を持つ子、パグやペキニーズ、フレンチブルドックなどの短頭種と呼ばれる子たちは一般的に麻酔がハイリスクとなることが多いです。健康な子であっても0.02-0.03%の割合で命に関わる副作用がでるという報告もあります。

安全な麻酔をするには??

では、麻酔の危険性を減らすにはどうすればいいのでしょうか??

肥満は麻酔の危険因子の一つです、肥満な子は適切な食事制限を行い、理想体重に減らすことで麻酔のリスクを下げることができます。麻酔の前12時間以降に断食することで麻酔中の嘔吐による誤嚥性肺炎や窒息のリスクを減らすことができます。また、術前のレントゲン検査、血液検査で全身状態を把握することも重要な作業になります。

麻酔リスクが高い子は、2次病院などの麻酔科のある病院での麻酔をお勧めします。

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