幼少期の避妊・去勢手術や、成長期の関節疾患、老齢期の内臓疾患などワンちゃんや、猫ちゃんの一生において手術を受ける機会があると思います。近年のペットの長寿化に伴って手術を経験する子は増えてきました。
一般的に手術をおこなってから安定するまでの数日から数週間は入院になることが多いです。避妊・去勢などの浸潤性の低い手術は翌日には退院することが可能です。
待ちに待った退院の日、今までは動物病院でお世話してもらえてたから安心だけど、お家ではどうしてあげればいいの?お散歩に今までどうり行っていいの?抜糸はいつするの?ほかに気を付けないといけないことは?と、不安に思うことがたくさんあると思います。
今日は、ペットが手術を行ってから通院が終了するまでのあいだ、気を付けなければいけないポイントを紹介します。
ポイント① 縫合糸が取れないように気を付けよう
これは、避妊・去勢手術、整形外科手術、腫瘍の摘出術など全ての手術に共通する注意点です。
手術では必ず皮膚を切開しなければいけません、切開した皮膚が完全にくっつくまでおよそ2週間かかります。ですから、手術を行った2週間後に抜糸を行うのが一般的です。
抜糸より前に糸がほつれてしまったり、切れてしまうと傷口が開いてしまう場合があります。傷口が開くと術創感染のリスクがたかまったり、腹壁ヘルニアの原因となったりしますので、再縫合が必要となります。
退院後、縫合糸が切れてしまう原因は主に2つです。
1つめは特に猫におおいんですが、傷口をなめることで糸が切れてしまいます。猫の舌はやすりの様にざらざらしています。これは、骨にへばりついた肉をそぎ落とすために進化したため何度も糸をなめることで糸は簡単に切れてしまいます。
2つめは傷口を掻くことで爪が引っ掛かり切れてしまいます。手術を経験したことがある方は経験があると思いますが手術後は、術創の痛みが引くと次に激しい痒みを感じることがあります。人の場合は我慢することが出来ますが、犬や猫はかゆいと掻いてしまいます。
この2つを防ぐためにはエリザベスカラーの使用や、傷口がすっぽり隠れるようにお洋服を着せてあげるのが効果的です。
ポイント②感染が起きないように気を付けよう
どんな手術でも感染のリスクはつきものですが、特に肛門周囲の手術や、口腔内の手術、人工物を入れる整形外科の手術などでリスクが高くなります。
特に感染予防を意識する時期は、手術後から抜糸までの期間です。前述しましたが、抜糸までの期間は皮膚が完全には閉じていません。皮膚は外部からの細菌の侵入を防ぐ重要なバリア機構です。手術によってこのバリア機構が破綻しています。
傷口への感染は、傷口を舐めたり、傷口周辺が汚れることで起こります。
傷口を舐めないようにするためには、ポイント①でも紹介しましたが、エリザベスカラーやお洋服が効果的です。
傷口が汚れてしまった場合は流水で流してあげるようにしましょう。シャンプーで洗ったり消毒薬を使うことはお勧めできません。シャンプーは刺激性がありますし、消毒薬は感染の原因となる細菌と戦ってくれる常在菌と呼ばれる菌達を攻撃してしまうからです。
お洋服がおしっこで汚れてしまったり、汚れたトイレシーツがケージ内にあった場合はすぐにきれいなものに変えてあげるようにしましょう。
ポイント③体温の変化に気を付けよう
傷口がきれいな状態であっても、内部で感染を起こしてしまう場合があります。病院では血液検査を定期的に行うことで感染に伴って増加する白血球数を指標にして判断をすることが可能ですが、お家では血液検査をすることはできません。
そこで重要になってくるのが、体温です。感染が起こると、慢性的な微熱が出るようになります。動物用の体温計を使って体温を把握するようにしましょう。体温を測られるのが苦手な子は毎日のスキンシップを通して熱感が無いか見てあげるようにしましょう。
ポイント④最後までしっかり通院しよう
抜糸も終わったし、最近調子いいからもう病院行かなくてもいいかなと思うかもしれません。
自己判断はとても危険です。手術を行った原因にもよります多くの病気は術後の評価を行うことがとても大事です。手術によって状態が安定しているのかなどを、検査を行って持続的に観察することが大切です。
今回紹介した例は、一般的な手術後の過ごし方です。その子その子に会った適切な管理方法は主治医の先生にしっかり聞きましょう。また、不安に思うことがあったら、相談しましょう!!
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